ユニセフの調査によると、日本の子どもの自己肯定感は世界的に低く、特に高い教育水準を持つ国々と比較してもワースト2位という結果が報告されています。
自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れ、自分自身を肯定する感覚のことです。この感覚が十分に育っていないと、子どもは自分に自信を持つことができず、他者との関わりにおいても不安や劣等感を抱きがちです。
本記事では、子どもの自己肯定感を下げないために親や保護者ができることについて、具体的なポイントを解説していきます。
自己肯定感とは
自己肯定感とは、自分の存在そのものを受け入れ、肯定的に評価する力です。言い換えれば、「自分はこのままで価値がある」「自分は他者に愛される存在だ」と感じる力です。
この感覚が強い人は、失敗や他人の評価に対しても柔軟に対処することができ、逆境に直面しても前向きに対処することができます。
自己肯定感が低いとどうなるの?
自己肯定感が低いと、子どもが感じる影響は多岐にわたります。それぞれをもう少し深く掘り下げて見ていきましょう。
自分に自信が持てない
自己肯定感が低い子どもは、まず自分自身の価値を正しく評価できません。
自分の成功や達成感を「たまたま」や「運が良かっただけ」と捉えることが多く、せっかく得た成果も心から喜べないことがあります。また、挑戦する前から「どうせ失敗する」と決めつけてしまうため、自己成長のチャンスを見逃しやすくなります。
たとえば、学校での発表やスポーツの試合など、周囲から評価される場面で、自分の実力を発揮することに恐れを感じ、結果的に実力以下の成果しか出せない場合が多いです。
そしてその結果をもとに、「やっぱり自分はダメだ」と感じることで、さらに自信を失いがちです。この悪循環が続くことで、自己肯定感のさらなる低下につながります。
他者の評価に依存しやすい
自己肯定感が低いと、子どもは他人の評価を基準に自分の価値を測るようになります。
特に友達や先生、さらには親からの反応を過剰に気にしてしまい、「どう思われているか」が行動の中心となってしまうのです。このような状況では、他人がポジティブな反応を示したとしても、それに頼りすぎてしまい、自己の評価が揺れやすくなります。
他者の評価を気にしすぎる子どもは、自分の意見や希望を伝えることをためらうことが多く、常に「自分が期待されていること」を優先する傾向があります。
これによって、自己表現が制限され、結果的に自分らしさを失いがちです。
たとえば、好きな服や趣味でさえも他人の意見に左右され、「自分が本当にやりたいこと」を見失うことがあります。そして、周囲の期待や評価に対するプレッシャーが大きくなると、精神的な負担が増し、心の健康にも悪影響を及ぼします。
挑戦を避ける
自己肯定感が低いと、新しいことや困難な状況に直面するたびに「どうせ自分にはできない」と感じ、挑戦そのものを避けるようになります。
これは、失敗を「自分の価値がない証拠」として捉えがちだからです。
子どもは失敗を経験することによって成長しますが、自己肯定感が低いとその失敗が怖くて挑戦を避けてしまうため、成長の機会を自ら閉ざしてしまうことになります。
また、挑戦しないことで成功体験を積む機会が減り、ますます自己肯定感を高めるチャンスが失われます。たとえば、スポーツや学業での新しい目標に対して「自分には無理」と諦めてしまうことで、やがて「自分は何をしても成功しない」と信じ込むようになってしまいます。
こうした思考は、大人になった時にも影響を与え、キャリアや人間関係においても、挑戦を避け続ける傾向が強まる可能性があります。
自己評価の低下と悪循環
これらの要素が重なり、子どもはどんどん自己評価を低くするようになり、悪循環に陥っていきます。挑戦を避け、他人の評価に依存し続けると、自己肯定感はさらに低下し、自分が「ダメな存在だ」と確信してしまうようになります。
これは、子どもが成長していく中で、長期的に大きな影響を与えることが懸念されます。
自己肯定感が低い子どもたちは、思春期に入るとさらに自己否定の感情が強くなり、不安やストレスが増しやすくなります。この段階で、自分に自信がないことが対人関係や学業にも影響を及ぼし、孤立や無力感を感じる場面が増えてしまうのです。
したがって、早い段階で自己肯定感を高めるための支援が必要であり、子どもが自分自身を肯定できる環境づくりが親や保護者の役割として重要となります。
子どもの自己肯定感を下げないための5つのポイント
ここからは、子どもの自己肯定感を下げないために、親ができる具体的な行動について紹介します。
子どもが自分に自信を持ち、困難に対しても前向きに挑戦できるようにするためには、親や周囲の大人のサポートが非常に重要です。
以下では、5つの大切なポイントをお伝えしますので、ぜひ参考にして日常の育児に役立ててください。
他者からの評価は気にしない
他者からの評価は子どもの自己肯定感に非常に強い影響を与えます。特に、友達や学校の先生、親など、身近な人たちからの評価に敏感になりがちです。
しかし、重要なのは、他人の考えや評価は完全にコントロールできないということを子どもに理解させることです。これは子どもにとって難しいことかもしれませんが、親が一貫したサポートをすることで、その意味を少しずつ理解するようになります。
例えば、子どもが学校で友達に悪口を言われた場合、親が「気にしないで」と軽く言っても、子どもはその言葉を深く傷つき、自分の価値を疑ってしまうことがあります。
そのため、親としては「その友達の意見は、あなたの本当の価値を表しているわけではない」というメッセージをしっかりと伝え、自分自身の価値を見失わないようサポートすることが大切です。
また、どうしても他者の評価が気になる場合、子どもに「自分の人生は自分のもので、他の人がどう思うかはコントロールできない」ということを教えることも重要です。
親が子どもの気持ちに寄り添いながら、必要ならば不必要に他者の評価にさらされる場面を減らし、距離を取るよう指導することが、子どもにとって有効な対処法となります。
たとえば、嫌なことを言う人との関わりを最小限にするような環境を作ることが、子どもに安心感を与え、自己肯定感を守る助けとなります。
他者と比較しない
他者と自分を比較することは、自己肯定感を著しく低下させる大きな要因です。
例えば、学校での成績やスポーツの成績が兄弟や友達と比べられると、子どもは自分の努力や成果が否定されたように感じることが多く、これが続くと「自分は価値がない」という感覚に陥ります。
親がまず自分自身の行動を振り返り、他人との比較を避けることが重要です。
親が他人と自分を比較している姿を見せてしまうと、子どもも自然とその考え方を学んでしまい、自己評価を他者との相対的なものとして捉えるようになります。
これを避けるために、親がまず「人はそれぞれ異なる存在であり、優れていることがすべての幸せを意味するわけではない」というメッセージを繰り返し伝えることが大切です。
特に兄弟姉妹間での比較は、自己肯定感を下げる強力な要因となるため、親としては「一人ひとりの違いを尊重する」姿勢を徹底しましょう。
たとえば、成績が良い兄弟がいたとしても、他の兄弟の個性や才能をしっかりと認め、それぞれの違いを肯定的に捉えることが、全員の自己肯定感を高めるためのカギとなります。
成長マインドを育もう
「成長マインド」とは、固定された才能や能力に頼るのではなく、努力や経験を通じて人は成長できると考えることを指します。この考え方は、自己肯定感を育む上で非常に有効です。
成長マインドを持つことで、失敗や困難に直面してもそれを成長のチャンスとして捉えることができ、自己評価をポジティブなものへと変えることができます。
例えば、子どもが学校でテストの成績が思うようにいかなかった場合、「頑張ったね」と褒めるのはもちろん、「何を学べたのか一緒に考えてみよう」と、失敗を次の挑戦に活かす姿勢を育むことが重要です。
失敗は成長のための一部であると理解することで、子どもは失敗を恐れることなく、新しい挑戦に取り組む勇気を持つことができるようになります。
また、日常生活でも子どもの努力に目を向け、結果だけでなくプロセスを評価することが大切です。
例えば、運動会での結果にかかわらず、「練習を頑張ったね」「あの時の粘り強さが素晴らしかったよ」といったプロセスを褒めることで、自己肯定感を高めることができます。
肯定的な言葉を使おう
子どもの自己肯定感に大きな影響を与える要素のひとつが、日々の言葉遣いです。特に親からの言葉は、子どもの自己認識に強い影響を及ぼします。
否定的な言葉が繰り返されると、子どもは「自分はダメな存在だ」と感じるようになりがちです。一方で、肯定的な言葉を使うことで、子どもは自分を肯定的に捉え、自信を持ちやすくなります。
アファメーション(肯定的な自己暗示)は、その一例です。
アファメーションとは、「自分は大丈夫」「私はできる」といった肯定的な言葉を自分に対して繰り返し語りかけることで、自己肯定感を高める方法です。
子どもが自分でアファメーションを行うことが難しい場合、まず親が積極的に肯定的な言葉を使い、子どもの心にポジティブなメッセージを届けることが重要です。
たとえば、子どもが何かに失敗した時、「失敗しても大丈夫」「そのままで十分素敵だよ」と励まし、次のステップに向けて前向きな気持ちを持たせるよう心がけましょう。
親からのポジティブな言葉が、子どもの自己肯定感を高める大きな力になります。
ホルモンバランスを整えよう
ホルモンバランスも、自己肯定感に大きな影響を与える要素です。
特に、セロトニンやオキシトシンといった「幸せホルモン」と呼ばれる物質は、気持ちを前向きにし、リラックスさせる作用があります。これらのホルモンが適切に分泌されることで、子どもは精神的に安定しやすく、自己肯定感も自然に高まります。
セロトニンは日光を浴びることで分泌が促進されます。たとえば、子どもと一緒に散歩をしたり、公園で遊ぶ時間を持つことで、セロトニンの分泌が増え、心身ともにリフレッシュできます。
特に、屋外での活動はリラックス効果が高く、自己肯定感を高めるための環境づくりにも役立ちます。
一方、オキシトシンは親子のスキンシップや友人との親しい交流によって分泌されます。
たとえば、親が子どもにハグをしたり、家族との触れ合いの時間を大切にすることで、オキシトシンが増え、子どもは安心感や幸福感を感じやすくなります。
これにより、自己肯定感が自然と育まれる環境が作られます。
まとめ
子どもの自己肯定感を育てるためには、日常生活の中で親がどのように接するかが非常に重要です。
子どもは、親の言葉や行動から自分の価値を感じ取り、自己評価を築いていきます。そのため、親が意識してポジティブな姿勢で接することで、子どもは安心して自己を肯定する力を育むことができます。
まず、他者の評価に左右されず、自分の価値を見出せる環境を作ることが大切です。子どもが何かを達成したときには結果だけを褒めるのではなく、その過程や努力を尊重する姿勢を示しましょう。
たとえ失敗しても、その挑戦自体に価値があることを伝えることで、子どもは「挑戦することが大切だ」という意識を持てるようになります。これが、失敗を恐れずに前に進む成長マインドの土台となります。
さらに、肯定的な言葉を日常的に使うことで、子どもの自己肯定感は強くなります。親からの励ましや肯定的なフィードバックは、子どもにとって大きな心の支えとなります。小さな成功でも大きく称え、失敗も「成長の一部」として前向きに捉えることが大切です。
また、子どもの心身の健康を支えるために、リラックスできる環境を提供することも大切です。
外で一緒に遊んだり、親子の触れ合いの時間を大切にすることで、子どもの心が安定し、安心感が増すでしょう。こうした心地よい環境の中で、子どもは自分に自信を持ち、健やかに成長していくことができます。
親が子どもの自己肯定感を大切に育てる姿勢を持つことで、子どもは自己の価値を信じ、明るく前向きな人生を歩む力を身につけていくのです。
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